免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(immune-related adverse events: irAEs)
免疫チェックポイント阻害薬(immune-checkpoint inhibitors: ICIs)は, 免疫細胞が活性化されることで様々な免疫関連有害事象(immune-related adverse events: irAEs)を引き起こす.
などが有名. 同時に複数のirAEsが重複することもある.
鑑別疾患:(1) 化学療法や放射線療法に伴う副作用, 癌転移に伴う症状, (2) 傍腫瘍性神経症候群
中枢神経障害
(1) 自己免疫性脳炎:傍腫瘍性神経症候群との鑑別は非常に難しい. ICIs使用によりPNSが顕在化する例も指摘されている.
(2) 無菌性髄膜炎:薬剤投与から発症まで10-30日と期間が長い. 症状も重症で薬剤中止の上, ステロイド治療を行う. 髄膜脳炎を呈する例もあり.
(3) 脊髄炎:髄内転移との鑑別が問題になる. 抗AQP4抗体, 抗MOG抗体との関連は不明.
末梢神経障害
多発神経根炎:GBSやCIDPとも異なる部分あり.
筋障害
(1) 重症筋無力症:全身倦怠感, 易疲労性, 筋痛などの非特異的な症状に始まり, 数日で急速に進行する. 一般的なMGと比べて, 球症状やクリーゼの頻度が高い. 抗AChR抗体の陽性率は60-70%程度, 抗MuSK抗体陽性例は報告なし. 眼症状だけの軽症例もあり.
(2) 炎症性筋疾患:四肢近位筋・体幹の筋力低下, 筋痛, CK上昇に加え, 眼瞼下垂や眼球運動障害といったMGを疑わせる臨床症状をしばしば示すのが特徴的.
*MGと炎症性筋疾患のoverlapがirAEsの特徴. 心筋炎や呼吸筋の障害を合併することがある.
治療
米国と欧州からガイドラインが発表されている.
有害事象の重症度指標であるCTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)により治療法を検討.
Grade 1 → ICIsは中止
Grade 2 → PSL 0.5-1.0mg/kg
Grade 3-4 → PSL 1-2mg/kg or ステロイドパルス. 他, PEやIVIg, 免疫抑制剤
<CTCAE>
Grade 1 軽症; 症状がない, または軽度の症状がある; 臨床所見または検査所見のみ; 治療を要さない
Grade 2 中等症; 最小限/局所的/非侵襲的治療を要する; 年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限*
Grade 3 重症または医学的に重大であるが, ただちに生命を脅かすものではない; 入院または入院期間の延長を要する; 身の回りの日常生活動作の制限**
Grade 4 生命を脅かす; 緊急処置を要する
Grade 5 AEによる死亡
<コメント>
irAEsに伴うMG, myositisのoverlap例, 脊髄炎, 末梢神経障害を疑う症例があり勉強しました. 傍腫瘍性神経症候群や薬剤自体による副作用との鑑別は本当に難しいです...またこのページは更新していきます.
参考文献:BRAIN and NERVE 73(1): 35-46, 2021