抗合成酵素ミオパチーと抗OJ抗体
抗合成酵素ミオパチーと抗OJ抗体
- アミノアシルtRNA 合成酵素 (aminoacyl transfer RNA synthetase; ARS) に対する自己抗体 (抗ARS抗体) は炎症性筋疾患の代表的な自己抗体
- 抗ARS抗体はこれまでに抗Jo-1抗体,抗EJ抗体,抗PL-7抗体,抗PL-12抗体,抗OJ抗体,抗KS抗体,抗Ha抗体,抗Zo抗体の8種類が報告されている. (抗Ha抗体,抗Zo抗体は1例報告).
- これらの抗体陽性例は, 筋炎, 間質性肺炎, 関節炎を3徴とし, レイノー症状, Mechanic’s hand, 発熱を頻繁に伴うなど共通した特徴的な臨床症状を有し, 抗ARS抗体症候群(anti-synthetase syndrome [ASS])と呼ばれる [1].
- 抗OJ抗体もASSとの関連が報告されている.
- 抗OJ抗体は筋炎特異的自己抗体(myositis-specific autoantibodies [MSAs])であり, 特発性炎症性ミオパチー(idiopathic inflammatory myopaties [IIMs] の5%未満に認める. 抗体はisoleucyl-tRNA synthetaseを標的としている. 抗ARSはIIMs患者の11-40%に認める. 間質性肺疾患 (ILD) が唯一の症状(約90%)であることが多いが, 大多数の患者(約75%)に筋炎が認められ重症である.
- 抗OJ抗体はELISAやラインブロット法(EUROLINE Myositis Profile 3)では検出ができない. 必ずRNA免疫沈降法で測定する.
- 抗OJ抗体に, 抗Jo-1抗体, 抗SS-A/SS-B抗体, リウマチ性疾患を合併することもある. 悪性腫瘍の合併はほとんど報告されていない. 疾患頻度が極めて低いため, 悪性腫瘍との関連が検討できていない.
- 抗合成酵素ミオパチーは抗Jo-1抗体の頻度が低く, 従来考えられていたよりも抗OJ抗体の頻度が高い. 抗OJ抗体陽性例では, 他のサブタイプに比較して重篤な筋力低下, 頸部筋力低下, 筋萎縮の頻度が高く, 重症なミオパチーを呈する.
- 抗合成酵素ミオパチーはperifascicular necrosisを特徴とする.
- 抗合成酵素ミオパチーの治療の基本はステロイド±免疫抑制剤. ステロイドにILDやmyotisisは良好な反応を示す.
<コメント>
抗OJ抗体は頻度が低いというよりは, 正しい測定法で検出されていない例が多いかと思います. 抗ARS抗体症候群の可能性を認知し, 抗OJ抗体陽性例ではIPが約90%, myositisが約75%に合併することを知っておく必要があります. 疑わしきはRNA免疫沈降法で測定しましょう. 重症なmyositisでは抗SRP抗体, 抗HMGCR抗体に加え, 抗OJ抗体を測定するべきです. この領域に関して近々英語でcase reportを作成しようと思っています, 頑張ります.
参考文献
[1] Targoff IN. Autoantibodies in polymyositis. Rheum Dis Clin North Am 1992;18:455-482.
[2] 抗合成酵素ミオパチー. 臨床神経2020; 60: 175-180
[3] Anti-OJ autoantibodies: Rare or underdetected ? Autoimmun Rev. 2019 Jul;18(7):658-664.