脳神経内科と医学英語の勉強ノート

日々勉強したことを記録していきます

低体温療法

適応

  • 目撃者のある心停止
  • 原則75歳以下, 発症前にADL自立
  • 初期調律がVF or VT
  • 蘇生後の血行動態が安定している
  • 昏睡状態(GCS<8点)

 

適応外

  • 意識の改善(GCS≧9)
  • 偶発性低体温(深部体温<30°)
  • 持続透析患者
  • 悪性腫瘍末期
  • 頭蓋内出血など脳疾患
  • 妊娠中
  • 外傷

施行例

1. 末梢Vを2ルート確保. 4°の生食2000mlを急速投与(約30分で)

2. 胃管挿入, 人工呼吸器装着

3. 温度センサー付きHrカテーテル挿入

4. Arctic Sun. 目標体温32-34℃など

5. ACS例では心カテ準備

6. 薬剤投与

鎮静:PRO or MDZ

鎮痛:fentanyl 0.5-1.0ml/h

筋弛緩:エスラックス1-2ml/h (必要時1-2mlフラッシュ)

 

鎮静・鎮痛・筋弛緩のまとめ

鎮痛法
  ※ 副作用として鎮静, 呼吸抑制, 腸管蠕動低下, 嘔気・嘔吐がある
  ※ 腸管蠕動抑制などで栄養管理が難しくなる場合, 適宜ケタミン, デクスメデトミジン, アセリオ, ロピオンなどを併用する. 
 
鎮静法
 1% プロポフォール(200mg/20ml/1A) 2%ならこの1/2で(必ず確認)
  
  • 原液1.5-5mlフラッシュし, 1.5-5ml/hで開始
  • 1-4mg/kg/h(BW50kg5-20ml/h)で調整 高容量(>4ml/kg/hr, 48時間以上)ではPRISに注意する
  • 体動時1-2ml早送り, 0.5mg/kg/h(BW50kg2.5ml/h)ずつup
 
  ※ 循環不安定な患者に使用する際は要注意
  ※ 中止後10-15分程度で覚醒する
  ※ 脂質製剤であり最低12時間ごとに交換が必要. 感染予防には単独ルートで, ライン感染に要注意. 
  ※ 副作用として, 高中性脂肪血症, 汚染によるsepsis, 横紋筋融解症, 急性膵炎, まれにPRIS. 制吐作用がある. 
  ※ 48時間以上の長期使用のときには, CPK, コレステロール, 中性脂肪, 膵酵素をモニタリングする
ミダゾラム (10mg/2ml/1A) 
 
  • 鎮静量:0.02-0.1mg/kg/hr (BW50kgで0.2-1.0ml/h)
  • てんかん重積量:0.05-0.4mg/kg/hr (BW50kgで0.5-4.0ml/h)
  ※ 挿管後の陽圧換気による血行動態不安定が考慮される場合 → ミダゾラム or ケタミン
  ※ フェンタニルと併用すると特に呼吸抑制強い
  ※ せん妄リスクが高くなる. 使用するのであれば短期間が条件. 不用意に使わない.
  ※ 36-48時間以上の長期間持続投与で大量投与の際には, 突然の中止でベンゾジアゼピン離脱症候群が起こる可能性がある
  ※ 大量投与かつ長期間投与の際の減量は25%/24時間ずつとするべき
プレセデックス (200μg/20ml/1V)
 
  • 1A(200μg)+生食48mlを0.2-1.5μg/kg/h (BW50kgで2.5-19ml/h) で開始
  (※loadingするなら, BW 50kg12.5ml/h1時間投与)
 
  ※ 簡単な目安として, 体重×0.1-0.2ml/hから開始する. loadingは体重×0.2-0.3ml/h
  ※ 鎮痛作用は軽度に留まる. フェンタニルケタミンが除痛には必要.
  ※ 呼吸抑制, せん妄が少ない点がメリット. 呼吸抑制少ないためフェンタニルと相性が良い. 
ケタミン (50mg/5ml/1A)
  • 体重50kgで0.5-2.5ml ivし, 0.2-2ml/hで開始
  ※ 鎮痛, 鎮静作用両方ある. 
  ※ 血圧低下がない. 循環動態不安定ねショック状態の鎮痛・鎮静に使用可能
  ※ 自発呼吸温存が可能. 気管支拡張作用もある. 
  ※ フェンタニルの腸管蠕動低下抑制が問題になる場合, ケタミン持続を併用するとフェンタニルを減らすことができる. 
 
筋弛緩法
 ◯ エスラックス50mg/5ml/1V
 ・ 挿管時には0.6-1mg/kg ivで用いる. 作用発現1-1.5分, 作用持続30-60分
 
 ◯ スガマデクス(ブリディオン) 200mg/2ml 1V, 500mg/5ml 1V
 ・ エスラックスで万が一CICV(cannot intubate, cannot ventilate) になっても, 16mg/kg使用で約6分程で筋弛緩が回復する 

PEAの原因

PEAの原因

<覚え方1>

  • Acidosis : アシドーシス
  • Bleeding : 大量出血, 外傷
  • Cardiac tamponade : 心タンポナーデ
  • Dissection : 大動脈解離
  • Embolism : 肺塞栓症
  • Freezing : 低体温
  • Gas & Glucose : 低酸素血症, 低血糖
  • Hyper / Hypo K : 高/低K血症
  • Infarction : 心筋梗塞
  • Jam and Jam: 緊張性気胸, 循環血液量減少
  • Kusuri:薬物

 

<覚え方2>

明日血ガス心配だが今日薬借りていたい

  • アシドーシス
  • ンポナーデ
  • 酸素血症
  • 筋梗塞
  • 塞栓
  • 気胸
  • K
  • 低体

抗合成酵素ミオパチーと抗OJ抗体

抗合成酵素ミオパチーと抗OJ抗体

  • アミノアシルtRNA 合成酵素 (aminoacyl transfer RNA synthetase; ARS) に対する自己抗体 (抗ARS抗体) は炎症性筋疾患の代表的な自己抗体
  • 抗ARS抗体はこれまでに抗Jo-1抗体,抗EJ抗体,抗PL-7抗体,抗PL-12抗体,抗OJ抗体,抗KS抗体,抗Ha抗体,抗Zo抗体の8種類が報告されている. (抗Ha抗体,抗Zo抗体は1例報告).
  • これらの抗体陽性例は, 筋炎, 間質性肺炎, 関節炎を3徴とし, レイノー症状, Mechanic’s hand, 発熱を頻繁に伴うなど共通した特徴的な臨床症状を有し, 抗ARS抗体症候群(anti-synthetase syndrome [ASS])と呼ばれる [1].
  • 抗OJ抗体もASSとの関連が報告されている.
  • 抗OJ抗体は筋炎特異的自己抗体(myositis-specific autoantibodies [MSAs])であり, 特発性炎症性ミオパチー(idiopathic inflammatory myopaties [IIMs] の5%未満に認める. 抗体はisoleucyl-tRNA synthetaseを標的としている. 抗ARSはIIMs患者の11-40%に認める. 間質性肺疾患 (ILD) が唯一の症状(約90%)であることが多いが, 大多数の患者(約75%)に筋炎が認められ重症である.
  • 抗OJ抗体はELISAやラインブロット法(EUROLINE Myositis Profile 3)では検出ができない. 必ずRNA免疫沈降法で測定する.
  • 抗OJ抗体に, 抗Jo-1抗体, 抗SS-A/SS-B抗体, リウマチ性疾患を合併することもある. 悪性腫瘍の合併はほとんど報告されていない. 疾患頻度が極めて低いため, 悪性腫瘍との関連が検討できていない.
  • 抗合成酵素ミオパチーは抗Jo-1抗体の頻度が低く, 従来考えられていたよりも抗OJ抗体の頻度が高い. 抗OJ抗体陽性例では, 他のサブタイプに比較して重篤な筋力低下, 頸部筋力低下, 筋萎縮の頻度が高く, 重症なミオパチーを呈する.
  • 抗合成酵素ミオパチーはperifascicular necrosisを特徴とする.
  • 抗合成酵素ミオパチーの治療の基本はステロイド±免疫抑制剤. ステロイドにILDやmyotisisは良好な反応を示す.

免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(immune-related adverse events: irAEs)

免疫チェックポイント阻害薬(immune-checkpoint inhibitors: ICIs)は, 免疫細胞が活性化されることで様々な免疫関連有害事象(immune-related adverse events: irAEs)を引き起こす.

 

  • 中枢神経障害:自己免疫性脳炎, 無菌性髄膜炎, 脊髄炎
  • 末梢神経障害:特に多発神経根炎
  • 筋障害:重症筋無力症と筋炎のoverlap

 

などが有名. 同時に複数のirAEsが重複することもある.

鑑別疾患:(1) 化学療法や放射線療法に伴う副作用, 癌転移に伴う症状, (2) 傍腫瘍性神経症候群

 

中枢神経障害

(1) 自己免疫性脳炎:傍腫瘍性神経症候群との鑑別は非常に難しい. ICIs使用によりPNSが顕在化する例も指摘されている.

(2) 無菌性髄膜炎:薬剤投与から発症まで10-30日と期間が長い. 症状も重症で薬剤中止の上, ステロイド治療を行う. 髄膜脳炎を呈する例もあり.

(3) 脊髄炎:髄内転移との鑑別が問題になる. 抗AQP4抗体, 抗MOG抗体との関連は不明.

 

末梢神経障害

多発神経根炎:GBSやCIDPとも異なる部分あり.

 

筋障害

(1) 重症筋無力症:全身倦怠感, 易疲労性, 筋痛などの非特異的な症状に始まり, 数日で急速に進行する. 一般的なMGと比べて, 球症状やクリーゼの頻度が高い. 抗AChR抗体の陽性率は60-70%程度, 抗MuSK抗体陽性例は報告なし. 眼症状だけの軽症例もあり.

(2) 炎症性筋疾患:四肢近位筋・体幹の筋力低下, 筋痛, CK上昇に加え, 眼瞼下垂や眼球運動障害といったMGを疑わせる臨床症状をしばしば示すのが特徴的.

*MGと炎症性筋疾患のoverlapがirAEsの特徴. 心筋炎や呼吸筋の障害を合併することがある.

 

治療

米国と欧州からガイドラインが発表されている.

有害事象の重症度指標であるCTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)により治療法を検討.

 

Grade 1 → ICIsは中止

Grade 2 → PSL 0.5-1.0mg/kg

Grade 3-4 → PSL 1-2mg/kg or ステロイドパルス. 他, PEやIVIg, 免疫抑制剤

 

<CTCAE>

Grade 1 軽症; 症状がない, または軽度の症状がある; 臨床所見または検査所見のみ; 治療を要さない

Grade 2 中等症; 最小限/局所的/非侵襲的治療を要する; 年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限*

Grade 3 重症または医学的に重大であるが, ただちに生命を脅かすものではない; 入院または入院期間の延長を要する; 身の回りの日常生活動作の制限**

Grade 4 生命を脅かす; 緊急処置を要する

Grade 5 AEによる死亡

 

<コメント>

irAEsに伴うMG, myositisのoverlap例, 脊髄炎, 末梢神経障害を疑う症例があり勉強しました. 傍腫瘍性神経症候群や薬剤自体による副作用との鑑別は本当に難しいです...またこのページは更新していきます.

 

参考文献:BRAIN and NERVE 73(1): 35-46, 2021

 

医学英語 -推量するための表現-

It may be that ...

...かもしれない.

 

It is assumed that ...

...と想定される.

 

It is possible that ...

..ということはあり得る.

 

It is reasonable that ...

... ということは納得できる.

 

One possibility is that ...

一つの可能性は...

 

We may consider the possibility that ...

..という可能性を考察しても良い.

 

参考文献

英語論文によく使う表現 発展編

医学英語 -強調するための表現-

We should notice that...

...に注目すべきである.

 

It is imortant to note that...

...に注目すべきである.

 

The first point to notice that...

まず注目すべきことは...である.

 

Besed on our experience, we would like to emphasiza that ...

我々の経験に基づいて, ...ということを強調したい.

 

We should not overlook that...

...を見過ごすべきでない.

 

It is worth noting that...

...ということは注目する価値がある.

 

It should be emphasized that ...

...ということは強調されるべきである.

 

Our data also underscore the point that ...

我々のデータは...という点を強調する.

 

参考文献

英語論文によく使う表現 基本編

理科系のための英語論文表現文例集